図1

人間の眼の網膜には光に感じる細胞(視細胞)があり、視細胞が光を捕らえることが視覚の始まりとなっています。一般には、視細胞のうち錐体と呼ばれるものには、L錐体、M錐体、S錐体の3種類(以前、これらは赤錐体、緑錐体、青錐体と呼ばれていました)があり、それらが我々に色彩知覚をもたらす基になっています。しかし、これらのうちひとつが欠損している2色覚者、あるいはその働きが弱い異常3色覚者(以下、これらをまとめて色弱者と呼ぶことにします)がいます。
色弱者は、一般的な色覚を持つ人(色覚正常者または3色覚者ともいいます)よりも色の見分ける能力が劣り、色覚正常者とは色の見えも異なると考えられています。 色弱者がどのような色をみているのかは、原理的に解明することはできませんが、数々の傍証により強度の色弱者の色の見えは図1のようであるのではないかと考えられています。図1から、色弱者では、見える色数が少なく、混同してしまう色が存在するのが分かります。色弱者が混同してしまう色を知る、そして、その配色を避けることは、色彩デザインを行う上で重要なことです。このようなデザインのことをカラーユニバーサルデザインといい、現在では、配色を確認するために、図1の色変換(Brettelら、1997)はカラーユニバーサルデザインを実践する上で欠かすことのできない道具となっています。
本研究では、この色変換の正確性を検討しました。図2は、3色の中からある1色を見つけるために必要となる時間を測定した結果です。色覚正常者と色弱者で比較したところ、青色に関しては、この色変換では色弱者のパフォーマンスと一致しないことが分かりました。しかし、一方では、色覚正常者でいう「青」と「緑」の中から「青緑」を見つける場合だと、色覚正常者よりも色弱者の方が素早く、「青緑」を見つけることができます。このことは、色弱者はあらゆる場面で「色弱」であるわけではないことを意味しています。

図2

受賞歴

  • 発表奨励賞受賞
    日本色彩学会第42回全国大会[千葉]’11 (2011年5月14日(土)-15日(日)) 小倉智美,須長正治,妹尾武治 “視覚探索を用いた2色覚ミュレーションの有用性の評価”,日本色彩学会誌,vol.35 Supplement, pp.10-11 (2011)

Data

学生氏名小倉 智美

指導教官須長 正治 准教授

発表年度2010年度

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