クリスチャン・ボルタンスキーは、1944年にパリで生まれ、主に記憶をテーマにしながら、写真やビデオアート、インスタレーションなど幅広い創作活動を展開している現代美術作家である。反復や曖昧さといったものを作品に持ち込む彼の手法には、絶えず生や死といったアンビヴァレントな要素が内在している。例えばそれは、生の記憶を社会学的な手法で展示することで死へと導いたり、冷たく強固なミニマル的形態の中に人々の顔写真を収めたり、生と死とも読み取れる両義的なキャプションを用いたりといったことである。本論は、自身の記憶を探るところから始まった作家の視点がより多くの人々の記憶へと向かうまでを辿りつつ、こうした相反する矛盾要素の意味作用を検証することで、彼の作品における記憶表象の在り方を考察するものである。

Data

学生氏名品野 優華

指導教官米村 典子 准教授

発表年度2009年度

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