我々は、見ている光景を記憶するのに色情報を用いることがあります。2色覚者は、3色覚者に比べて、色弁別能が劣り、見えている色数も少ないと考えられています。そのため、光景を記憶する際に用いる色情報も少なくなっていると考えられます。それにも関わらず、自然風景画像の記憶において、2色覚者は3色覚者と同程度の正答率を示し、画像記憶の手掛かりとして3色覚者と同程度の色情報を用いることができるということが報告されています。(Gegenfurtnerら、1998)。
本研究では、Gegenfurtnerらの結果をより詳細に検討するために、自然風景を記憶するとき、どの程度色情報が使われているのかを検討しました。3色覚者を被験者とし、カラー画像、白黒画像、2色覚者の見えにシミュレーションされた画像(図1)を用いて自然画像の記憶課題の実験を行いました。図2は実験結果を示しています。図2から白黒画像と他の2種類の画像間では有意差が見られたものの、カラー画像と2色覚シミュレーション画像との間に有意差は見られませんでした。これらの結果は、自然画像の記憶において、色情報はある程度使われるものの、明暗情報と1次元の色情報で充分にカラー画像と同程度、自然画像を記憶することができることを示唆しており、Gegenfurtnerらが報告した結果は2色覚者の記憶特性でなく、3色覚も含めた人間の色覚特性であること意味しています。

受賞歴

  • 日本色彩学会誌掲載
    松本 剛,須長正治,妹尾武治 “自然画像記憶における色情報の寄与”,日本色彩学会誌, vol.34,pp.330-335 (2010)

Data

学生氏名松本 剛

指導教官須長 正治 准教授

発表年度2009年度

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